だって、しょうがない
 寂しくて人肌が恋しい夜……。
 本来なら、夫の淳に慰めを求めるべきなのに、その寂しさを作りだしているのは、まぎれもなく淳だった。
 だからと言って、出会い系サイトを使うのに愛理は抵抗を感じてしまう。

「んー、やっぱり出会い系とかは、怖いかな」

 すると、テーブルの上にあった愛理のスマホを持ち上げた由香里は、慣れた様子でスマホをタップする。

「スマホ貸してね。登録だけしてあげる。後は愛理次第なんだし、使うときはサイト内の掲示板に日にちと場所を入れて、気に入った人を選べばいいのよ」

「あ、待って、私、そのアプリは……」

 テーブル越しの由香里に向かって、声を上げようとした。けれど、出会い系アプリとか大きな声で言えずに、愛理は抵抗を諦める。

「まあ、使わなくたっていいんだから、”他にも男なんていくらでもいる”って、思えるでしょう? 御守りみたいなモノよ」

 愛理は、手元に戻ったスマホの画面をしげしげと眺めた。その画面には、新しいアイコンが追加されていて、癒し系ゲームによくあるような可愛らしい子猫のイラストが描かれている。ぱっと見では出会い系サイトのアプリとはわからないデザインのアイコンだった。

「20代もあと少しなんだから、悔いのないように楽しく人生、生きなくちゃ。自分の人生は自分だけのものなんだから」

 そう言って、華やかな笑みを浮かべる由香里は自信に満ちていた。

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