だって、しょうがない
 洋風居酒屋『青の洞窟』に到着した。お店のドアを開くと店員から「いらっしゃいませ、2名様ですか?」と声が掛かる。

 待ち合わせだと伝え、店の奥に足を進める。店内は洞窟を模したゴツゴツとした岩肌の壁に仕切られた個室がいくつも並んでいた。
 店員に指定されたカーテンを開けると、先に到着していた、朝比奈美穂と佐久良が笑顔を向ける。

「久しぶり! 先に始めていたよ」

 朝比奈美穂と佐久良は並んで座っていた。テーブルの上には、既にサラダやローストビーフ、生春巻きなどが置かれている。
 テーブルをはさんだ向かいの席に愛理と由香里は腰を下ろした。

「今日の招集は何か、報告したいことがあるのかな?」
と挨拶がわりに由香里が問いかけに美穂がフフフッと笑い頬を染める。

「実はね。結婚が決まったの」

「えー、おめでとう」
「どんな人」
「どこで知り合ったの」
 などと、愛理も由香里も佐久良も矢継ぎ早に質問を飛ばした。

「ほら、私、フラワーアレンジメントの講師やっているでしょう。生徒さんが割と良い家の奥様が多くてね。息子に会ってくれないか、って言われちゃってね」
と、誇らしげな表情の美穂は、髪を耳に掛けながら言葉をつづけた。
「それでね。田丸薬品に勤めている田丸誠二さんを紹介されたの」

「もしかして、それって御曹司? 製薬会社の跡取りって事? すごーい」
 由香里が驚きの声を上げ、愛理は横で頷き、佐久良は目を大きく見開き口に手を当てている。

 美穂は、その反応に満足気に頷き、口角を上げ憫笑を浮かべる。
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