長嶺さん、大丈夫ですか?
⌒* ⌒*



 そして退勤後。

「いらっしゃいませー!」

 ノリのいいクラブミュージックと楽しそうな笑い声が聞こえる中で、陽気な店員に言われた料金を支払った私は手の甲にブラックライトのスタンプを捺された。

 ここは都内某所、スタンディングバー。
 いわゆる、出会いの場である。

 これまでの自分から考えたら、ありえない場所にいると思う。

 なぜ私がここに居るのかと言うと、帰りの電車で長嶺さんがよく遊ぶと耳にしたことがある駅の名前がアナウンスされたとき、とある衝動に駆られたからだった。
 お姉さん、寄ってかない? 新しい出会いあるよ!
 そんな安い言葉でフラッと入ったこのスタンディングバーの名前は、前に長嶺さんが電話で口にしていたものだった気がした。

 お店には心なしか目をギラつかせた男性たちと、キレイにおしゃれした女性たち。
 薄化粧で地味なスーツに身を包む私は明らかに場違いだった。
 お店の隅っこの壁に背中をつけて、先ほど貰ったモスコミュールにちびちびと口をつけて懸命に存在感を消す。

 私は、新しい出会いが欲しくてここに居るわけじゃなかった。
 

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