長嶺さん、大丈夫ですか?

その前日、太一の事情。






 長嶺光は、俺が知る中でもかなり酒が強いほうだ。


「なぁ太一ぃ……俺ってクズだよなぁー」

「……おん」

 
 どんだけ酒が入ってもある程度の理性が残っていて、誰かが酒で潰れたら大体介抱役をしてるようなやつ。
 遊び人のくせに、実は誰よりも人に気を遣って生きてるクソ真面目な人間で、人に甘えることが極端に苦手なところが光の数少ない欠点かもしれない。

 だからそんな光がグダグダに酔っぱらうなんてときは、かなり参ってるときで……
 

「もうどうしたらいいかわかんねぇ、クラゲになりたい」


 こんな意味分かんねぇ弱音を、こんなジジイしか来ないようなスナックで俺の首に抱きついて呟いてるときなんか、相当だ。


「あらー、光ちゃんがそんなになるなんて珍しいわねー」

「……コイツここに捨ててってもいい?」

「ダメよぉ〜ちゃんとたいちゃんが家まで送り届けてちょうだい!」


 光が住んでるアパートの住人らしいスナックのお母さんが、光の前に水の入ったグラスを置いた。
 店内にはミラーボールがまわり、頭にネクタイを巻いた昭和なジジイのへたくそな演歌が響いている。
 仕方がないので一旦煙草を置き、女にするように光の後頭部に手を添えて優しく撫でてやる。


「しょうがねぇな。 今夜は俺が優しく抱いてやるよ」

「……太一は絶対優しくないから嫌だ」


 優しかったらいいのかよ。 かなりキてんな。

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