長嶺さん、大丈夫ですか?
 そこで長嶺さんの目がピク、と動いた。
 ゆっくり開いた半分の目で2回ほど瞬きをすると、寝ぼけ眼で私を捉える。


「…………おはよう」

「あ、おはようござい、ます」

「…………」



 長嶺さんはまだ寝てるのか、ボーッと私を眺めていたかと思えば、私の頭を優しく撫で始めた。


「っ、? あ、の……」


 甘ったるい色気を纏う長嶺さんにしっとり見つめられたまま、ひたすら優しく撫でられる。

 どうしたらいいかわからず、顔を熱くさせるしかない私に長嶺さんはふ、と大人っぽい笑みをこぼした。


「かわい……」


 そう呟きながらちゅ、とおでこにキスを落として、私を腕の中に閉じ込めた。


「っ、」


 すっぽり包まれて、直に触れる長嶺さんの肌の感触に、必然的に心臓の音はバクバクと大きく速くなっていく。


「……今日土曜日だけど、なんか予定ある?」


 なにこれ なにこれ

 やばい


「このままデートしない?」


 こんなの沼る

 抜け出せなくなっちゃう


「もうちょっと……一緒にいたい」


 私の髪を撫でながら甘えた声を耳元に落としてくる長嶺さんに、

 私の中の何かが危険信号を出した。




 〝逃げるなら今〟




「…………ごめんなさい」

「え?」


 私は思い切り長嶺さんの胸を押して、ベッドから飛び出した。


「っ、!?」


 動揺する長嶺さんがベッドから落ちるのを無視して、そこに落ちてた鞄と服を掴んで玄関にダッシュする。
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