長嶺さん、大丈夫ですか?

長嶺さんがブチギレたので。




「……昨日ですか? 何かありましたっけ」

 翌朝。 私は自分のデスクでPCに向かい淡々とデータを整理するフリをしながら懸命に記憶喪失のフリをしている。 そんな私の横顔を、長嶺さんは頬杖をついてじーっと見つめて、

「うん。 酔った勢いで俺とチューしたの」

 しれっと嘘を言う。

「はい?」

 私は思わずキーボードを叩く手を止めた。

「帰り際、泥酔した花樫さんを介抱してたら店の出入口の段差に躓いて転んでちょうどいいところに唇があってうっかりチュー 「してません」

「覚えてんじゃん」

「覚えてません」

 昨日の記憶がしっかりあることはとっくに長嶺さんにバレてしまっているのだろう。
 それでも私は真顔でしらを切り続けることしかできない。
 長嶺さんはそんな私をやっぱりじーーー……っと見ている。

「まぁそうだよね。 昨日の花樫さん凄かったし、覚えてないことにしたいよね。 わかるわかる」

「……」

 隣のやかましいイケメンはニコニコしながら私の首を精神的に絞めてくる。
 後輩の可愛がり方がS過ぎませんか? どこの番長ですか?

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