血の味のする恋を知る



血塗れの凄惨なこの場で自覚するなんてなんだかわたしらしいように思える。ふわふわとした心地の中で膝をつき、恍惚としたままに愛おしい人を見上げた。


小首を傾げながら音もなく近づいてくるその人がゆっくりとわたしの方に手を伸ばす。真っ白で細い手なのにその爪は黒瑪瑙の角と同じように黒く、鋭く尖っていた。


あの爪が突き立てられればわたしたちの皮膚なんて簡単に裂けてしまうなと考えつつ、その手を受け入れるように手を広げてて目を閉じた。


膨大なマナを貯められる我が身が呪わしかったけれど今は誇らしい。わたしもこの人の糧になれるのだと思えばこれ以上もなく幸福感で満たされた。



窓の外では青と赤の双子月が輝き、夜の美しさを映す。


この暗く輝く夜の日を、絶対に忘れない。魂に刻みつけられた震えを、歓喜を、衝撃を。


この夜が本当のわたしが生まれた日。新しい人生が始まった瞬間だ。


身体に痛みが走り、血と臓物の臭いが鼻を刺す。そして……………




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