【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
 何もないとは言ったけど……言ってないことはある。

 スレンダーとは聞こえがいいが、胸はなく色気のかけらもない女だ。

 そして危険な女だということを俺は知っている。

「だからさ、なんかきっかけが欲しい。協力しろよな!」
「えぇー。面倒くせー! 俺、そういうのは苦手なんだよ」

 稲森には関わりたくないんだ!
 しかし、廣澤が目を細めて俺を睨む。

「お前、いいのか? 結衣子ちゃんにバラしても……」

「は? な、何が⁉︎ 俺、結衣子にバラされて困るようなことないぞ! お、俺は一途なんだからな!」
「わかってるよ。……なんで動揺してるんだ? 本当にやましい事ありそうだな」
「ない!」

 ない! 俺は何もやってない! やってないけど…………心臓がバクバクする……。
 ん? 何廣澤のやつ、ニヤニヤ笑ってるんだ?

「俺がさ、お前と結衣子ちゃんの初体験の全貌を知ってるって事、結衣子ちゃんに言っちゃおうかなー」
「なっ」
「普通、そんな話ペラペラしゃべられてたら、いい気しないわな。…………………どうだ?」
「お、お前、なんて事を! てか、なんでそんなこと知ってるんだよっ!」
「藤田が言ったんじゃないか。え、覚えてないのか? お前、飲みにいってアルコール回ってきたら、結衣子ちゃんとのアレコレ、惚気だすの鉄板じゃないか。
 …………気づいてなかったのか? え、そんな酔ってたっけ?」

 飲んだら気が大きくなるのはわかってる。 
 飲むとめっちゃ気分いいからな! 
 でも、酒癖が悪いと思ったことはない。

 ええーっ! 俺、結衣子のこと喋ってたのかー? しかも初体験⁉︎

 ヤバい。バレたら確実に“お預け”される……。

俺のバカーーっ‼︎
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