離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
プロローグ
再恋愛　～元・夫と恋していいですか？～


プロローグ


　人は一生に何度恋に落ちるのだろうか。

　幼稚園のときの初恋、小学生のときの恋心、高校生ではじめてできた彼氏。

　片想いでも両想いでも私はそのときの自分の好きという気持ちを真剣に相手にぶつけてきたと思う。

　でも二十九歳の今思うのは。私はこれから先、もう二度と誰も好きにならないだろうということ。

　一度の結婚の失敗くらいで、と周りは言うけれど。

　そもそもその結婚は私にとって失敗なんかじゃなかった。

　今でも彼と過ごした時間は私の人生の中で一番輝いていて、それでいて一番苦しい時間だった。
　
　でもそれが心の中にあるおかげで、今日も笑っていられる。

　人に理解されなくても、それでもいい。私の中の愛は、すべてあの人に捧げたから。

　出会いがなかったわけじゃない。バツイチだとわかっていてアプローチしてくれる人もいた。

　実際につき合ってみれば忘れられるかもしれないと思ったこともある。頭でそう考えても、心が動かないのだ。

　今はもう私の目の前にはいない、これからも私のもとには帰ってこない彼をいつも思い出してしまう。

　そんなことを繰り返して、私はいつしか恋をするのをあきらめた。

　正確には彼との恋を忘れるのをやめた。

　そしてずっと彼ヘの思いを抱いて生きると決めたのだ。

　誰にも理解されなくていい。彼のことを心から追い出すくらいなら、私はずっとひとりでいい。

　しかし今、信じられない光景を目にした私は茫然としている。

「久しぶりだね。琴葉(ことは)」

「……れ、いじ」

　昔と変わらない笑顔を浮かべるその男性。心から会いたいと思い、そしてそれと同時に会いたくないと思う。

　私の〝元夫〟が目の前にいた。

< 1 / 115 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop