離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 彼はこれから、北山グループの会議に出席のために地下の駐車場に向かう。今すぐフロアに戻ったらひとりで好奇心いっぱいのみんなの視線に耐えられる気がしないので、見送り次いでに一緒に地下に向かう。

 エレベーターが到着して中にはいっても、私の小言が止まらない。

「だいたい玲司は――んっ」

 扉が閉じた途端、いきなり唇を塞がれた。

「んっ!」

 いきなりのことで、抵抗する暇すらなかった。

「ねぇ、ここ会社なんだけど」

「知ってる。でも琴葉がかわいかったから、我慢できなかった」

 そんなふうに言われると、抗議しないといけないのに怒りよりもうれしさが先に立ってしまう。

「玲司ってばずるいんだから」

「どっちがだよ。怒ってる顔までかわいい琴葉のほうがずるいだろ」

 彼はまったく反省した様子もなく、私のこめかみにキスを落とした。そんな彼を軽く睨む。

「ごめん。うれしくて浮かれてる」

 いつだって冷静な判断をする彼がそんなことを言うなんてびっくりした。

「そう言われると、怒れないじゃない」

 私は頑張って怒った顔をしようとするけれど、うまくいかずに笑ってしまう。

「じゃあ、仲直りのキスしようか?」

「本当に反省してるの?」

「してない」

 暴論だと思うけれど、私は彼の誘惑に勝てずに目をつむる。

 重なった唇から、彼の気持ちが伝わってくるようだ。

「これから四年分のキスを取り戻さないといけないから、大変だぞ」

 そんなふうに甘く囁いた彼は、その言葉通り地下にエレベーターが到着するまでキスが続いた。

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