離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 私が軽く睨むと、彼はなんだかうれしそうに笑った。

「本気なんだけどな。でも中野さんも元気になったし、俺の目標も達成されたから」

「ライエッセを北山の傘下に置くこと?」

「いやそれは手段であって目的じゃない。俺がやりたかったのは琴葉の大切なものを守ること」

「それがライエッセだったってこと?」

 彼がうなずきながら私を膝の上にのせて抱きしめた。

「俺が守れなかった四年間、君が頑張ってきたものを無駄にしたくなかったんだ。もちろん魅力的な会社だったっていうのもあるけど」

「玲司!」

 まさか私のためだったなんて。

 私は彼を思いきり抱きしめた。こんなにも私を大事に思ってくれる人がほかにいるだろうか。

「そこまで喜んでくれて、頑張ったかいがあった」

 軽く言う彼だったけれど、そんなに生やさしいものじゃなかったはずだ。

「ねぇ、玲司。どうやったら私、あなたに恩返しができる?」

 ギュッと彼を抱きしめながら聞いた。

「そうだな――」

 彼の声が甘く掠れた気がする。

「今日は朝まで琴葉を好きにしたい」

 熱のこもった視線で私の反応を伺う彼。

「それじゃ、いつもと変わらないから恩返しにならないんじゃない?」

 尋ねた私の唇に、彼が軽いキスをした。

「そんなことない。俺にとっては今こうやって琴葉がそばにいてくれることがなによりもうれしいんだ」

 彼は私の頬をその大きな手のひらで包んだ。

「一度失ってその大きさに気がついた。だからもう二度と手放さない。俺にこの先一生甘やかされるその覚悟はできてる?」

 私のために会社を買収するような人だ。きっとこの言葉は冗談でもなんでもない。

「そんなのとっくにできてるよ。だって出会ってからずっと私の中には玲司しかいないんだもの」

 離れていても彼が幸せならそれでいいと思えた。そんな人にこれから先出会えるなんて思えない。

「そんなかわいいこと言うと、明日の朝には後悔することになるぞ。俺を煽るんじゃない」

 彼が私の耳にキスをしながら、熱のこもった声で囁く。

「後悔なんてするはずない。だって私も同じ気持ちだから」

 ふたりで見つめ合い、唇を重ねる。

 何度彼とキスしただろうか。でも一向に慣れることなくいつもときめきとドキドキを与えてくれる。

「琴葉、ずっと一緒にいよう。ずっと、離れないで」

 私がうなずくと、彼は満足そうに笑い、私を抱き上げた。
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