離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 ちゃんと話は聞いていたのに、理解できないくらいパニックだ。

「あれ、もしかしてちゃんと伝わってない?」

 彼は少し照れくさそうに鼻の頭をかいている。そして私の顔をまっすぐ見つめる。

「鳴滝琴葉さん、俺とお付き合いしませんか?」

 ストレートな告白が胸にささり、気がついたら私は彼の瞳に魅入られてしっかりとうなずいていた。



 そんなふうにして始まったふたりの関係だったが、私はあっという間に彼を大好きになった。

 カッコいいうえに、仕事もできる。それだけでも憧れるには十分だった。勢いで告白をOKしたけれど、一緒にいればいるほど彼のことが好きになっていった。

 私の仕事での悩みの解決策を一緒に模索してくれたり、愚痴となればただ理解をしめしてくれる。三歳しか違わないのに精神的に大人な彼にはいつも助けられていた。

 けれど大好きなドライブ中には、まるで少年のような表情を見せたりもする。

 そんな彼の隣にいて、夢中にならないはずなどなかった。

 優しい心遣いに、ちょっと意地悪な態度。なによりも私をすごく大切にしてくれる。

 彼と一緒にいて、愛されていることを実感する。これまでしてきた恋がままごとだと思えるほど、彼との恋は私を人としても大きくしてくれた。

 だから付き合って一年目の記念日。彼にプロポーズされたときも私は迷うことなく彼との結婚を決めた。

 みんなの憧れ高嶺の花である玲司と、どこにでもいる平凡で目立たない私の結婚。周囲から羨ましがられ、同期なんかは大げさにシンデレラストーリーだと騒いだ。

 職場の人や、友人を招いての結婚式。ヨーロッパへの新婚旅行。新居にはふたりで選んだ家具や食器が並び、家でふたりでいる間はいつもくっついていた。

 結婚しても私は仕事を続け、一緒に出勤できることも特別なことのように思えた。

 喧嘩らしい喧嘩もなく、私が拗ねても彼はそれすらいつも優しく包み込んでくれる。本当に人生の中で幸せの絶頂だった。

 そしてその幸せがいつまでも続いていくのだと、その頃の私は信じて疑ってもいなかった。

 その日もドライブが趣味の彼の運転で、横浜までドライブデートをしたあとだった。

「琴葉も運転すればいいのに」

「ダメダメ。だって免許取ってから一度も運転していないんだよ」

 完璧なペーパードライバーの私。彼の大切にしている車に乗るなんて恐ろしくてできない。
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