冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。

嫉妬と独占欲



「いらっしゃいませ!三名様ですね、こちらのお席へどうぞ!」


 あれから、ふじみやにいつも通りの日常が戻っていた。
 今日もたくさんのお客様をお迎えし、美味しい定食を召し上がってもらい、満足して帰っていただく。


「ありがとうございました!」
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございます!またお越しくださいませ!」


 ごちそうさまでした、の一言がとても嬉しい。
 ふじみやはこうでないと。

 何もかも元通りになったけど、変わったことが一つだけある。


「紫」

「っ、いらっしゃいませ」


 お兄ちゃんの親友で常連客だったこの人が、私の恋人になったこと。


「いや紫のこと迎えに来たんだけど」

「わかってますっ!もうちょっとで上がるから待っててっ」


 今日はこの後キリさんとデートなのだ。
 憧れだった彼氏とのデートがやっと実現するのかと思うと、ドキドキソワソワしてしまう。


「紫、本当にキリと付き合うんだな……」


 お兄ちゃんには改めてキリさんとのお付き合いを報告した。
「親友と妹って複雑だけど、二人が幸せなら応援する。紫のこと泣かせるなよ!」って言ってくれたお兄ちゃんは、やっぱり世界一最高のお兄ちゃんだと思う。


「お兄ちゃん寂しいよ〜」

「結婚する前からそれで大丈夫か?お兄ちゃん」


< 37 / 53 >

この作品をシェア

pagetop