冷徹な御曹司は親友の妹への溢れ出る独占欲を抑えられない。


 ぼーっとしているうちにあれよあれよと進み、いつの間にか会計が終わっていた。


「待ってキリさん!本当にいいの!?」
「何が?」
「だって、高いでしょう……!?」
「値段見てないけど、そこそこだろ。気にしなくていいから」


 いや気にしますが!?値段見ずにこんな高そうなものポーンと買えちゃうなんて。
 やっぱりキリさんって私とは住む世界が違うんだ……。

 嬉しいけど、急に不安になってきた。
 私はこんなに普通の大学生で定食屋の娘なのに、六条財閥のお嫁さんなんて務まるの……?


「指輪ができるまで一週間くらいか。もうちょい早くもらいたかったな」

「……。」

「紫?」


 ありがとうございました、とスタッフ全員で見送られ、改めてキリさんがすごい人なのだと思い知る。
 車に乗ったのにシートベルトを絞めるのを忘れ、呆然と俯いてしまった。


「どうした?」

「キリさん、なんで私なんですか?」

「え?」

「なんで私と結婚したいって思ってくれるんですか?」


 キリさんがストレートに想いを伝えてくれるのはすごく嬉しい。でも考えちゃう。
 なんで私なんだろうって。私なんて、普通の大学生なのに……。


「……俺さ、愛人の子なんだよ」

「えっ」


 キリさんから切り出された言葉に驚き、思わず彼の目を見返した。


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