義兄と結婚生活を始めます
プロローグ
少し肌寒さを感じる秋の季節。
まだ小さかった私の手を引いて、ランドセルを背負った姉が笑いかけてくれていた。
「だぁいじょうぶ!また会えるよ〜」
「…ひっく…うぅ…でも、わかんないもん…」
姉の言葉を信じきれなかった私は、あふれる涙を拭きながら、小さく抵抗する。
私の様子を見た姉は、クスッと笑うと足を止めてくれた。
「あおいは心配性だね…また会おうって言ってくれたんでしょ?」
「…うん…」
涙を拭ってくれる姉は、私の頭を撫でてくれる。
すると、肩を掴み進んできた道へ、体を向けてくれた。
まだ涙が浮かんでいた私の視界に、一人の男の子が一生懸命走っているのが見えた。
「あ…!」
「あお、い!!」
息を切らす男の子は、私の前で止まると、手を握ってくれる。
「おれっ、大きくなって、また会えたら…あおいと結婚する!!約束!!」
走ったせいなのか、この約束が恥ずかしかったのかはわからない。
でも、男の子の真っ赤な顔を見ると、私は嬉しくなった。
「…うんっ、約束ね!」
笑顔で返事をした私は、戻っていく男の子を姉と一緒に見送る。
じんわりと広がる暖かい気持ち、私はあの時の感情をまだ知らなかった。
それに、10代で結婚するなんて…こんな小さな私にはもっと知らない未来だったと思う。
一緒に手を振る姉がいなくなる、そんな未来も想像できなかった…。
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