義兄と結婚生活を始めます

8話

しばらく、ボーっとしていたあおいだが、我に返るとリビングへ戻った。
冷蔵庫へケーキを入れると、和真がすぐに食べられるように、出来上がっていたおかずをダイニングテーブルへ運んでいく。


(今日に限って着替えが長く感じる…)


和真が戻ってくるまで、気持ちが落ち着かないあおいは、ふと頭に小鳥遊家の集まりがあるのかと考えていた。
ちょっぴり不安になりつつ、夕食の配膳を済ませる。

すると、部屋着の和真がリビングのドアを開けた。


「あ、ちょうどご飯よそってるので…すわ……て……」


スーツ以外の和真の格好に、思わず口が止まってしまうあおい。
あおいが止まってしまったことが不思議で、和真も黙ってあおいを見る。


「…この格好は、変でしたか?」

「い、いいえ!!ごめんなさい!いつものスーツ姿とは印象が違って…!」


いつまでも見られることに、気まずさを感じたのか、和真は自分の格好を見直した。
和真とは別に、あおいは昼間にした和真との電話内容を思い出して、顔を赤くする。

すぐに炊飯器へ体を戻して、ご飯をよそう続きをした。


(うぅ…こんな時に思い出さなくても…!!顔、あつ…!)


「ふー…」


ゆっくり息を吐いて、二つの茶碗を持つとダイニングテーブルへ運んで行った。
自分の茶碗を受け取る和真。

「変じゃなくて良かったです」

「そんな…!和真さんはカッコイイし、スタイルもいいので何でも似合いますよ!絶対!」


椅子に座ったあおいは力説する。
あおいを見つめる和真に、恥ずかしくなったあおいは、小さく謝った。


「いただきます」

「…いただきます」


以降、何も触れてくれなかった和真の食事の挨拶で、さらに恥ずかしさが増す。
しかし、食事を進めながら和真から話しかけてくれた。


「この唐揚げ、いいですね。カリっとしてます」

「ほんとですか?お母さんが料理してるときに見てたので…でも、初めて揚げたのでそう言ってもらえて安心しました」


ご飯が進む和真の様子に、あおいはホッとする。
それから、思い出したように玄関先でのことを聞いた。


「あ、あの…さっき言ってた、出かけるっていうのは…」

「あぁ、水族館に行こうかと思いまして…」

「え!?」


思わず声を上げてしまったあおいは、行き先を呟いた。


「……水族館…」

「…嫌でしたか?」


勢いよく首を横に振ったあおい。
少し驚いた表情を見せつつも、無意識に強張っていた肩の力が抜ける。


「和真さんの…小鳥遊さんの方で集まりでもあるのかと思って…ちょっと、拍子抜けというか…安心と言うか…」


えへへ、と困ったように笑うあおいを見て、和真は箸を置いた。
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