義弟の恋人
廉の噂は事実だった、ということを自分の目で確認した私は、オレンジジュースの入ったグラスをただみつめ、大きく息を吐いた。

男と女がホテルの部屋でなにをするかが判らないほど、もう私は子供じゃない。

頭が真っ白になった私はそれ以降の意識が途切れ、ただ呆然としたまま時間が過ぎていった。

気が付くと窓の外から見える景色は、いつのまにか夕暮れを映しだしていた。

街で遊びに興じた人々も、もう家路につく時間だ。

ふと我に返り、心で自嘲する。

私はいったいなにをしているのだろう。

こんなところでコソコソと、人のプライバシーを覗いたりして。

廉が校則を破っていることを糾弾したいわけじゃない。

廉のことを義姉として心配だという気持ちも嘘じゃない。

ただそれだけじゃなく・・・どうしようもないくらい胸が痛いのは何故だろう。

「・・・もう帰ろう。」

そう席を立ちかけた時だった。

ホテルのエントランスから廉が出てくるのが見えた。

私はあわてて席を立ち、レジで会計を済ますとファミレスを出た。

一緒にホテルから出てくるのは躊躇われるのだろう。

廉がホテルから遠ざかっていく背中をみつめていると、しばらくして今度は廉と一緒にいた女性がホテルから出て来た。

ヒールの音をコツコツと響かせながら、女性が駅の方へ向かって歩いて行く。

私はなんの考えもなく、女性の背中を追った。

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