人気イケメンダンスグループのボーカル担当『天野先輩』に溺愛されました。

6*天野先輩視点

「寒くなってきたなぁ。そろそろここでお昼ご飯、食べられなくなるのかな……」

 いつものように屋上でお弁当を食べていた時、あのちゃんはさみしげな様子で空を眺めながら呟いていた。

 あのちゃんのさみしい顔をみるとこっちもさみしい気持ちになるから、あのちゃんの口の中に卵焼きをひとくち入れた。

 いつも僕が箸で小さくしてつまんだ卵焼きをあのちゃんの口に入れると、満足したような微笑みをくれて、それが見たくて気がつけば毎日卵焼きをお弁当に入れるようになっていた。

 好きな人に甘いものを食べてほしくなる習性が僕にはあるのだろうか。

 この卵焼きの砂糖の量もだんだん増えてきている気がするし、ここで甘いものパーティーを開催する日も増えてきた。

 冬になるとここのドアの鍵は閉まり、入れなくなる。毎年別に閉まることなんて何も感じていなかったけど。

 今は誰もいない屋上に僕がいて、あのちゃんもいる。居心地が良すぎるこの空間が消えてしまうのはさみしい。

 ここに来れなくなったら、もうあのちゃんとお昼ご飯を食べられなくなるのかな?

 というか、僕が卒業したら完全に前までの、d☆break(デイブレ)の天野音羽と天野音羽のファンの距離に戻る気がする。

 戻りたくはなくて、複雑な気持ちだった。だって、僕にとってあのちゃんは、前からファン以上の、特別な存在だったから。

 あのちゃんが助けてくれた時、あのちゃんが怪我をしていないのは知っていた。だけどただ一緒にいる理由を作りたくて「怪我が治るまで、あのちゃんが出来ないこと、代わりにしてもいいですか?」なんて、今思えば不思議だなと思える発言をしてしまった。

 しまいには 「卒業まで、右腕怪我したままでいてくれない?」って、急に気持ちが高まってそんな言葉まで。そんなこと言われたら嫌だよね。怪我なんて、一日でも早くなおしたいものだし。あの時は不吉なこと言っちゃったなぁ。

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