人気イケメンダンスグループのボーカル担当『天野先輩』に溺愛されました。
「抱きしめてやるから、こっちに来てよ」

 あの時は、ファンとしてのあのちゃんに言ったセリフだったから、すんなりと言えた。

 でも、今は――。

 実際にこの状況でそう言っている今は、心臓がバクバクしてる。

 あのちゃんの頭の上で一瞬『?』が見えた。そしておそるおそるこっちに近づいてきた。

 抱きしめたあとは、どうしたらいいんだろう。
 次はどんな言葉をかければいんだろう。

 言ってはみたものの、頭の中がぐるぐるしている。

 とりあえず手を広げて、あのちゃんを受けとめる体制になった。
 
 あのちゃんはなぜか今にも泣きそうだった。
 あせった僕は広げていた手を前に出し、無意識に自分から近寄ってあのちゃんを包みこんでいた。

「天野先輩と、このまま天界へ行ってもいいです。イベントの時も言われてやばかったけど、この状況で『抱きしめてやるから』なんて言われると本気でやばいです」

 真剣に天界とか、そんな発言をするあのちゃん。
 可愛すぎて、もしもこれから天界に旅立たなければならないのなら、このまま連れてきいたい。

 というか、自分も天界へ行くとか考えていると、そんなことを考えている自分に対してなんか面白くなってきた。

「ふふっ」

 僕が笑うとあのちゃんが上目遣いでこっちを見てきた。
 どうして笑っているの?って表情をしていた。

 そんな表情も愛しくて、僕はあのちゃんの頭に、もう一度キスをした。

 
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