人生は虹色
「えっ!……ちょっと、待ってよ〜」



僕の姿が消え、

森本さんは慌てる様子で、

机に置いてあった鞄を持ち、

僕を追いかけた。



険悪だった雰囲気は、

優しく包み込まれ、

心地良い空間に生まれ変わっていた。



「そう言えば、演奏会近いって言ってたっけ?」



僕は下駄箱で上履きから靴に履き替え、森本さんに尋ねた。



「うん、来週の土曜日」



「来週かぁ……じゃあ、暇だし行くわ」



「え!本気で言ってる?」



靴に履き替えた森本さんは僕の隣に来て、驚きながら僕の顔を覗き込んだ。




「うん、本気で言ってる!森本さんの演奏、続き聴いてないしさぁ」



「じゃあ……来てよ!文化センターでやるから絶対来てよ!」



少しだけ戸惑っていた森本さんから、満開の笑顔を見ることができた。




「うん、約束する!文化センターって———」



僕も微笑み返し、

会話を楽しみながら、

一緒に駐輪場まで向かった。



二人とも自転車に乗り、

髪を靡かせながら並走する。



紅く染まる空が僕たちの笑った顔を見つめる。


 

河川敷に咲いた草花が僕たちの話しを聞いている。






笑いが止まない二人は誰が見ても、楽しそうだった。




「じゃあ、また明日」



僕と帰る道が別れ、

森本さんに手を振る。




「うん、また明日」



森本さんも振り返し、

笑顔で帰って行った。
< 19 / 143 >

この作品をシェア

pagetop