人生は虹色





「——何で冬にすんだよ?!」



僕は身体を震わせながら、バーベキューコンロへと手を翳し、暖をとる。


タバコを口に咥えたまま、航兄ちゃんが倉庫内から椅子やテーブルなどを引っ張り出してやって来た。



「何でって?冬にするから楽しんじゃねえか!」



ニット帽にダウンジャケット。


雪国で雪掻きをするおじさんのような格好。


物凄く寒そうにやっているというか……。



僕は呆然と眺めるだけで、バーベキューコンロの温もりから一歩でも離れたくなかった。



「いや……でもさ、さみぃから中でしたらいんじゃね?ホットプレートでさ」



「たくっ、お前は分かってねぇな!中ですんのと外ですんのじゃあ、全然違うんだよ」



こんな寒い日に、外でBBQをしたいという航兄ちゃんの強いこだわりは、僕の冷え切った身体には響かなかった。



「何が違うんだよ?ただ寒いだけじゃん!」



「バカだなぁ。寒いからこそ、沁み渡るんだろ!」



「え?沁み……渡る?」



航兄ちゃんが苦戦しながら、椅子やテーブルを組み立てているのに見兼ねたのか、僕は一緒に組み立てるのを手伝っていた。



「はは、少しはやる気になったか?お前にはよく沁み渡るはずだぞ!」



「……」



何か分からないけど沁み渡るというキーワードだけで、勝手に手と足は動き出す。


こだわってまでしたい冬のBBQに、少しだけ興味が湧いてきた。
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