人生は虹色
「ありがと。俺さ……」



「どおした?」



言葉を詰まらせる僕に父さんは尋ねる。




「家族が嫌いだったんだよね。

嫌いだったけど……心のどっかでは嫌いになっちゃいけない自分もいてさ、完全には嫌いになれなかった。

兄ちゃんたちと比べられてばっかりでさ、兄ちゃんたちまで嫌いになりかけたし、また生まれてくるなら、この家に生まれてきたいなんて思えなかった。

自分の意見を言ったら怒鳴られるから、どんどん自分の居場所がなくなっていったんだよね」



「そうだったのか……本当にすまなかった」



父さんは僕の話を聞いて、肩を落とす。



僕の今まで思ってきたことを知って欲しかったし、もう隠したくないと思ったから。



「でも……まだ間に合うよね?」



「え?」



母さんは僕の問いかけに、

ポカンと口を開けていた。



「俺は嫌だよ。こんな家族!

昔みたいに笑って楽しく過ごしたいよ!

他の家族みたいに『おはよう』とか『今日はこんなことがあったよ』とかくだらない会話がしたいんだよ!」



理想の家族になんて程遠くて、

なれっこないと思ってきた。



当たり前のことで、

普通なことなんだろうけど、

我が家では難しい、そう思ってきた。



でも、完全には諦めていない自分に、そして、今まさに変わろうとしている家族に。



僕は確信した。



昔のように楽しい家庭に戻れるって。
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