運命
 そんなとき。

「彩美、久しぶりに大学のみんなで会わない?」

 そう鈴菜から電話で誘われた。和也に話すと、和也は「いいじゃないか」と笑った。

「行ってこいよ。たまには息抜きも必要だよ」
「そ、そうね。ありがとう」

 和也を会社に送り出し、私は鏡の前で何を着て行こうか服を出しては合わせる。そのとき、ぼんやり思った。私、最近服を買ったのいつだっけ?
 結局、働いていた時に買っただろう服を着て、久しぶりにちゃんと化粧をして、待ち合わせの居酒屋に行った。


「彩美、こっち」
 声がした方を向いて、あれ? と違和感を覚えた。
 私たち同じ年だったよね? なんでだろう。何か私と違う。
「彩美、和也君は元気? 上手くいってるの?」
 私以外は結婚してるのは鈴菜だけ。鈴菜はまだ結婚一年目の新婚さん。もう三人はまだ独身だった。
「和也は最近、仕事で疲れてるかな。でも、上手くはいってると思うよ?」
「じゃあ、ラブラブなんだ? 和也君浮気癖あったけど大丈夫そうね」
 鈴菜の冗談めかした言葉が突き刺さる。
「だ、大丈夫よ」
 スマホだってチェックしてる。ワイシャツやスーツのポケットにも何も入ってないし、口紅の跡もない。そう、浮気はされてないはず。
「でもさ、彩美もたまにはお洒落して和也君を飽きさせないようにしないと」
「うんうん。ちょっと、今日の彩美見て、老けたなと思っちゃったよ」
 え? 老けた? お洒落して化粧もしてきたのに?
 やっぱり、感じた違和感は間違いじゃなかったんだ。みんなの方が若く見える。
 でも、なぜなの?
「子供はまだなの?」
「う、うん」
「それなら尚更だよ。まだ若いんだからさ」
「彩美はもとがいいんだからもったいないよ」
 
 私だけが老けた。その事実は私を鬱々とさせた。交わされる私にはついていけない話題。まるで浦島太郎になったような気分だ。
 純粋に楽しめない自分がいた。
 なんだろう。私、この数年何してきたのかな。
 なんだか、疲れた。
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