運命

7

「ああ、哀れなことじゃ」
 彩美に薄紫の玉を売った老婆は、大きな水晶玉を覗き込んでため息をついた。
「やはり、運命というのはどうにもならんのかのう」
 彩美という女と和也という男はどうあがいても出会い、惹かれ合う。なのに幸せにはなれない。
「なんとも哀れすぎるの」
 老婆はもう一度大きく息を吐いた。
「そうならば、せめて」
 老婆は水晶玉に指を差し入れた。ずぶずぶと老婆の節くれだった指が水晶玉に入り込み、そして中から薄紫の玉を取り出した。彩美が老婆から買ったものだった。
「二人の縁を絶ってやろう。それでも駄目なら、もうどうにもできぬものじゃろうて」
 言って老婆は薄紫の玉を握りつぶした。
 破片がきらきらと舞う。その一つ一つに彩美と和也の記憶が映っていた。
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