やっぱり中身で勝負

ちょっと戸山くん!



「ちょっと!戸山くん。どういう事なの?」

「嗚呼〜〜!! オレも男だ! ハッキリ言うぞ!寺田さん!」

「はい?」

「寺田さんは、オレの初恋の人なの!!」

「ええ〜!!初恋?って…いつ?」

「寺田さんは忘れたかも知れないけど、中2の時にウチの認知症の婆ちゃんを送ってくれた時から…」

「??? あ〜。公園でお花を摘んでたお婆ちゃん?」

「そう。」

「え? 戸山くんが昔私を好きだったって事?」

「だから〜、あの頃はあの頃で好きだったけど、10年ぶりに再会して、この1ヶ月くらい寺田さんと話したりしているうちに…やっぱり…好きだなぁって……」

「戸山くん。私だよ? 美人でもないしファッションセンスもないし、1人でウジウジ悩んでても相談できる友達もいないような私だよ?」

「寺田さん、オレの思いを否定するのか?」

「いや、そうじゃなくて〜 良〜く考えた方がいいって!」

「さっき、寺田さんは、抗がん治療をしているお母さんも含めて包み込んでくれるハートのデッカい男がいいって言っただろ?
オレがなってやるよ!
だからオレの婚約者になって欲しい。」

「こ、こ、婚約者!って結婚の約束をした恋人同士って事だよね〜」

「そう!! 結婚しよう!沙緒里」

「ちょっと待って! 頭と心がついていけない…
戸山くんの初恋の人は…私…
お母さんの事も含めた結婚……
結婚しよう…沙緒里…………」

「今すぐ、電話してその彼氏と別れろ! 」

「今? いま?」

「そう。今だ! ホラ携帯出せ!」

「え、ちょっと私の携帯〜。
わかった! 今かけるから〜」
一郎は沙緒里の携帯の画面を横から覗き込んでいる。

【東川 敦志】のコールボタンを押す。
すると、すかさず一郎がスピーカー通話のボタンを押した。

〜…〜…
「はい。どちら様〜 オイ!茉莉花勝手に電話出るなよ〜」

「ハイ、もしもし」

「………」

「もしもし?」

「敦志。今の茉莉花さんって誰?」

「え、沙緒里? え?茉莉花? は?」

「もしもし〜私は敦志の彼女で〜す!」

「もしもし敦志。 二股男は私には必要ないから!さよなら。茉莉花さんとお幸せに〜 バイバイ」

「オイ!沙緒里!」
「敦志〜、二股男って何?
サオリって誰?」
「え、茉莉花これには誤解が…」

ピッ!! っと沙緒里は電話を切った。
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