やっぱり中身で勝負
10年ぶり

戸山 一郎

沙緒里は心臓外科の先生へ書類を持ってきた。

小児病棟へ戻る時
「寺田さん?」と声をかけられた

「はい?」と私が振り返るとガッシリとした背の高い男性が笑顔で近づいてきた。

「寺田さん! オレ戸山一郎 覚えてる?」

「戸山くん? え!あの戸山一郎くん? 
わぁ、中学卒業以来だね。元気?」

「ああ。寺田さんは看護師さんになったんだな。
寺田さんに似てたから思わず声掛けたんだよ」

「戸山くんは随分と大きくなったね!ビックリ。
高校からラグビーで関西へ行ったんだよね?
今はこっちに戻ってきたの?」

「ああ、今年から親父の会社で働いてるんだわ」

「へぇ〜 そうなんだ! 知らなかった〜」

そこへ
「一郎! これも持って帰ってくれる?」と一郎の母親が声を掛けてきた。

「あら? 一郎、こちらの看護師さんは…」

「母さん、寺田さんだよ」

「あら! 寺田 沙緒里ちゃん? 綺麗なお姉さんになって〜。 おばさんわからなかったわ〜
久しぶりね! この病院でお勤めされてるの?」

「はい。小児病棟で働いてます。」

「お母さんお元気? PTAの役員を一緒にさせてもらった事があるのよ。」

「ハイ…ぼちぼちです。」

「母さん、寺田さんは勤務中だからさ〜」

「そうね、ごめんなさいね。ウチのお父さんが明日心臓の手術なの」

「え、そうでしたか…」

「寺田さんごめんな、勤務中に呼び止めちゃって。今度地元にいる同級生と飯でも行こうぜ!」

「うん。ありがとう。では失礼します」と頭を下げて小児病棟へ向かった。
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