恋は秘密のその先に
第十八章 聖なる夜
そして迎えたクリスマス・イブ。

今日は、夕方からオーケストラを聴きに行き、その後文哉が予約したレストランに行く予定だった。

夕方までは特に予定を立てず、午前中は街をぶらぶらする。

ニューヨークは美術館や教会、図書館や駅など、どこもかしこも芸術的だ。

真里亜は、見るもの全てから刺激を受けていた。

定番のショップやデパートも見て回る。

「わあ、ティファニーのカフェなんてあるんですね。素敵!」
「すまん。行きたいだろうと思って予約取ろうとしたけど、だめだったんだ」
「そうなんですか?!副社長、私の為に予約を取ろうと?」
「だって、女の子は好きそうじゃないか」
「ふふっ。副社長、意外と女心が分かるんですね」
「意外とは余計だ」
「はーい。お気持ちだけで充分です」

会社の人達へのお土産も買い、両手いっぱいに紙袋を抱えてホテルに戻る。

次の予定までの時間、それぞれの部屋で文哉は仕事を、真里亜は日本の友人へ絵はがきを書いていた。

「さてと。そろそろ支度しようかな」

15時にホテルを出発して、コンサートを聴きに行くことになっている。

真里亜は時計の針が14時を過ぎたのを見てから、メイクを始めた。

鼻歌を歌いながら髪型もクラシカルにアップで整え、さて着替えようとクローゼットを開ける。

「え、あれ…?」

着ていこうと思っていた、紺のワンピースが見当たらない。

「どこ行ったんだろう?おとといミュージカルの時に着たわよね?その後…」

確か、昨日着た赤いワンピースをクリーニングに出して…

「あ!その時に一緒に出しちゃったんだ。大変!」

戻ってくるのは明日。

つまり、これから着ていく服が…ない。

「嘘でしょ?!オーケストラもディナーも、カジュアルな格好では行けないのに…」

その時、クローゼットに掛けられていたもう一着のドレスが目に入る。

(これを着るしか、ない…わよね)

真里亜はハンガーを手に取り、ため息をついた。
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