恋は秘密のその先に
 数日後。
 副社長のデスクに置いてあった仕事用のスマートフォンが鳴る。

 画面の表示を見た文哉が、一気に緊張したのが分かった。

 今日、キュリアス ジャパンからコンペに参加した企業に、連絡が来ることになっていた。

 真里亜と住谷は、固唾を呑んで見守る。

「お世話になっております。AMAGIコーポレーションの天城でございます。はい、はい。こちらこそ、先日はお時間を頂きましてありがとうございました」

 やはりコンペに関する連絡なのだろう。

 (それで、結果は?!)

 真里亜は住谷と前のめりになりながら、文哉の次の言葉を待つ。

「……はい」

 そう言ったきり、しばし文哉は無言になる。

 (ひょっとして、だめ……だったの?)

 真里亜はもはや祈るように両手を組んで文哉を見つめていた。

 と、次の瞬間、見たこともないくらい明るい表情で、文哉が目を輝かせながら真里亜達を振り返った。

「ありがとうございます! はい、はい。もちろんです。全力でお手伝いさせていただきます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」

 わあっ!と、真里亜は住谷と手を取り合い、声にならない喜びを伝える。

「それではまた改めて。はい、失礼いたします」

 通話を終えるとひと呼吸置いてから、文哉は、やったぞ!と喜びを爆発させた。

「わー、やりましたね! 副社長」
「さすがだな、文哉!」

 三人で肩を抱き合い、興奮しながら喜びを分かち合う。

「あー、マジで緊張した。ホッとしたなあ」
「本当に。良かったですねえ」
「いやー、しびれたわ。この達成感! 堪らんなあ」

 ひとしきり三人で盛り上がり、興奮冷めやらぬまま、まずは社長に報告した。

「本当か? でかした、文哉!」

 受話器から社長の大きな声が漏れ聞こえる。

 すぐさまコンペのチームリーダーにも伝え、こちらは、うおー!という皆の雄叫びが真里亜の耳にも飛び込んできた。

 興奮、安堵、達成感、そして仲間との絆。
 色々な想いが込み上げてきて、真里亜は幸せな気持ちに酔いしれていた。
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