恋は秘密のその先に
「はあー、なんだろう。身体は疲れてるはずなのに、ちっとも眠くならない」

 副社長室に入るなり、真里亜はドサッとソファに座り込む。

「真里亜ちゃん、さては酔っ払ってる?」
「ぜーんぜんですよ。もう幸せで楽しくて! あー、このまま一晩中おしゃべりしたいー。住谷さん、お酒とおつまみ、まだありますよ。ほら!」

 真里亜は、余っていたビールとおつまみをテーブルに並べる。

「お、いいね。三人で乾杯し直そうか」
「はい! 私、グラスとお皿持ってきますね」

 そう言って立ち上がった真里亜が、ふらっとよろけ、住谷が慌てて腕を伸ばして支えた。

「おっと! 真里亜ちゃん、やっぱり酔ってるな?」
「ふふっ。気持ちいいですー」
「分かったから、座ってな。歩いたら危ない」

 住谷は真里亜を座らせると、給湯室からグラスと皿を持ってきた。

「ではでは、改めて。かんぱーい!」
「お疲れ様でしたー!」

 三人でグラスを上げ、また互いを労う。

 しばらくすると、へらへらとしゃべりながらビールを飲み干す真里亜に、文哉が声をかけた。

「おい、その辺にしておけ」
「どうしてですかー? こんなに気分いいのに。ね? 住谷さん」

 真里亜はにっこり笑ってから、またグビグビとグラスを傾ける。

「もうやめておけ」

 文哉は真里亜の手からグラスを取り上げた。

「ああー! 何するのよ、この鬼軍曹!!」

 ブーッ!と盛大に住谷が吹き出して笑う。

「あっははは! 真里亜ちゃん、最高! 文哉、鬼軍曹だってよ!」
「お前、何を言って……」
「だってホントに鬼軍曹だもん! どこが違うのよ? 誰が見たって、副社長は鬼軍曹であります!」

 真面目に敬礼までしてみせる真里亜に、住谷はヒーヒー言いながら笑い転げる。

「いいぞ、真里亜ちゃん! その通りだ!」
「智史! お前まで何を……」

 覚えてろよーと、文哉は文字通り鬼の形相で真里亜を睨みつけていた。
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