恋は秘密のその先に
 ようやくクロークのある広いスペースまで辿り着き、文哉が住谷に連絡しようとスマートフォンを取り出した時だった。

「天城様。こちらを住谷様からお預かりしております」

 スタッフが文哉に、小さな封筒を差し出した。

「私に? ありがとう」

 礼を言って受け取ると、中を開けてみる。

 文字を目で追った次の瞬間、は?!と文哉は素っ頓狂な声を上げた。

「どうかしましたか?」

 真里亜が尋ねると、文哉はポカンとしたまま小さなメモを見せてくる。

『のっぴきならない事情で、お迎えに上がるのが遅くなります。お部屋を押さえましたので、しばらくそちらでお待ちください。お二人の鞄も運んであります。住谷』

 は?!と、真里亜も同じように声を上げる。

「お部屋? って、どこのことですか?」
「ここだろう。このホテルの3505室」

 文哉は封筒から、ルームカードを取り出して見せた。

「いや、えっと。わざわざお部屋を取るなんて、どういうこと? お迎えが遅くなるなら、ロビーのソファにでも座って……」
「でも、俺達の鞄は部屋にあるらしいぞ」
「そ、そんな……」
「とにかく行ってみるしかない」

 仕方なく、二人は35階に向かった。
< 95 / 172 >

この作品をシェア

pagetop