大学生をレンタルしてみた
レンタル彼氏

金曜夜10時、有楽町駅で私は人目を気にしながら財布を手にしていた。

「えっと7時待ち合わせだったんで、3時間丁度ですね、12,000円でお願いします」

21歳大学生の奏弥がわざわざスマホの電卓機能を使って数字を見せてきた。変なところ商業ぶるんだな、形だけのくせに。

私は分かってはいたけどそれなりに高いお金に少し躊躇いすら感じた。渋々お金を払おうとすると「あ」と奏弥が止めに入ってきた。

「PayPayでもいいですよ、あと今LINEで友達になってもらえれば次回から使える500円クーポンも配ってるんで」
「いいです」

私は12,000円を差し出す。奏弥は「あざす」と短く礼を述べてペコッと頭を下げた。

何やってるんだろう、私。

羞恥心で首から上が沸騰しそうだった。すっかり冷えた秋の夜風が冷やしてくれなかったら、東京のど真ん中でぶっ倒れてただろう。

「じゃ」
「じゃ」

私は奏弥に別れを告げると、逃げるように改札を抜け猛ダッシュで階段を駆け上がった。

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