大学生をレンタルしてみた
廊下
「夢燃〜MUNEN〜」

学生生活課の窓口からよく見える外掲示板に貼られた今年の学祭のポスター。
「なんでムネンなんて」と風間さんが言う。風間さんは50歳近い事務の女性だ。

「夢が燃えちゃってますね」
「誰が決めたんだか」

研究室で購入した4台のPCを台車に乗せる。私が普段使ってるものよりかなり薄そうだ。いいな、私の方が働いてるのに。とは言え、研究室で使ってたPCはかなり年季が入っていた。数年前から不満も挙がってたくらいだ。

風間さんと台車を押しながら業務室を出てエレベーターホールへと向かう。

「今年芸人さんでしょ、誰だか分からないけど」
「ゲストですか、五月雨ホライズンとスキャンダラスです」
「どっちも分かんないわ」

風間さんは白髪混じりの前髪を撫でながら首をぐるっと一周回した。シャツの襟の内側でむちむちの首周りの肉が動く。エレベーターが1階にやっと着く。チンという音を立ててドアが開くと、中は誰も乗ってなかったので私たちは悠々と2台の台車を乗せた。

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