虹へ向かって飛ぼう

*あの虹へ向かって飛ぼう


 Yデッキ沿いに流れる川、その両脇には桜並木が続く。

 今年もぼんぼりが灯り、夜には淡いピンクの桜がライトアップされ、たくさんの人たちが訪れていた。

 あれから1年、久しぶりにYデッキに来ていた。見渡す景色は何も変わらないのに、Yデッキに集まる若者はほとんど姿を消していた。

 川を挟んで、このYデッキとランドマーク側では世界が違うとメグは言っていた。この川が境界線だと。でも、それがなくなったように今ではこのYデッキも綺麗に整備され、デートスポットになっているようだった。

 メグのあの事件以来、このYデッキもすっかり変わってしまった。

 あの時は、この桜をこんなにのんびりと見ることもしなかった。

 毎日が精いっぱいで、どうしたら一人で生きていけるのかと、そればかりを考え、がむしゃらに生きていた。この美しい桜を見上げることもせずに。

 一人、下ばかりを向いて。

< 229 / 251 >

この作品をシェア

pagetop