虹へ向かって飛ぼう
Epilogue
『一緒に見た、あの日の輝く街並みも
朝になれば、一人だと気づく
その切なさが、うすれたイルミネーションを揺らした』
肌寒さに目を覚ました。
体を起こし見つめた先は、大きな窓から望む絶景。
薄暗い雲に覆われながらも真っ赤な朝焼けが横一直線に伸びていた。
見慣れたいつもの街並みが眼下に広がり、夜景の美しさを残す赤いイルミネーションが今も輝いていた。
3年前のクリスマスには、またこの場所にいるなんて思いもしなかった。
美しい朝焼けが、部屋いっぱいを東雲色に染める。
胸がしめつけられるような感覚に、思わず涙が溢れた。
こんなに美しい景色を見られる今があること、それを奇跡に思う。
隣で眠る先生の顔を見つめ、髪にそっと触れた。
夢なら覚めないで。
「ん……」
「あ、起こしちゃった。ごめんなさい」
「早いね。うわ、まぶし」
赤く染められた、まぶしい部屋を見て、顔をしかめた。
「ゆっくり寝てればいいのに」
「朝焼けを見たくて」
「朝焼け?」
「うん」
初めてこの部屋で見た朝焼け。それをまた見たかった。
「いつでも見にこれるよ」
「うん」
優しく笑う先生を見て、夢なんかじゃないと確信する。
それくらい、私にはこんな日がくることは奇跡でしかなかった。
こんな日がくることを信じることができなかった。
先生と出会うまで。