虹へ向かって飛ぼう
*2人だけの園芸部
朝早く学校に行くと、講堂脇の花壇に座り込む永山先生の姿があった。土いじりをする丸めた後ろ姿は、1ヶ月前から見ていたはずなのに、まったく気づきもしなかった。先生があの時の人だったなんて。
今だってまだ信じられずにいる。
「永山先生、何か手伝いますか?」
そんなふうに声をかけたのは初めてのことだった。
バイトのことが学校にバレたら、あんな時間にあんな所に居ることがバレたら、そう思うと永山先生を見張っていなければという危機的なものを感じていた。
「ああ、河原さん、おはようございます」
「……」
“河原さん”
“おはようございます”
昨日のあの態度とはまるで別人。
ボサボサの髪も、その変な眼鏡も、ダサいジャージ姿も、昨日の印象とはまったく違う。
本当に同じ人なの?
どっちが本当なのか知らないけど、まるで演技をしているみたい。