虹へ向かって飛ぼう

*背中の蝶は夢をみる


「まぁさー、あれだけ見た目が別人なんだもん、生徒にもバレないよねー」

「あの先生のこと?」

「そうそう! 『俳優だって秘密にするから、バイトしてることも言わないで!』ってハッキリ言ってやったわ! 契約成立! わはは!」

「ちょっと、椿! 大声で笑わないでよ」

「あ、ごめん。ちょっと興奮しちゃって」

 私の笑い声で、店内の視線が一気に集まった。

「だって、今まで私がフリな立場にいたんだもん。それが形勢逆転! 私の方が有利な立場になったんだから、こんなに嬉しいことはないじゃない」

 目の前に座るメグへコソコソと言った。


 今日はあいにくの雨。6月に入って雨の日が増えていた。

 いつものYデッキには居られなくて、Yデッキが見えるこのファミレスでメグと食事をしていた。

 Yデッキに集まる若者たちは、こんな雨の日でも傘をさし、楽しそうに笑顔を見せている。


 雨の日も横浜の街は美しく、輝きは変わらない。むしろ雨の横浜がしっとりとした雰囲気を出していた。見上げたビルの最上階は靄がかって、幻想的に見える。

 窓を流れる雨が激しさを増す。そろそろこの店も閉まる時間が迫っていた。

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