はじめてのエール

1.いつもの保健室

 雲ひとつない、すっきりした青空。
 絶好の体育祭日和。
 そして、わたし、鳥海 しずくにとって、はじめての体育祭。
 高校に入ってからはじめて、っていうわけじゃなくて。
 ほんとうに生まれてはじめての体育祭なんだ。

 生まれつきの持病のせいで、子どものころから激しい運動をすると具合が悪くなるわたし。
 だからこれまで運動会も体育祭も、休まざるをえなかった。
 それでも、身体を動かさないのはかえって毒だから、体育の授業にはなるべく参加するようにしてるけど、貧血を起こして保健室に行くこともしばしば。
 身体がままならないって、つらいなぁ……。
 こうやって保健室の広い天井を見上げながら何度嘆いたことだろう。
「先生ー、痛み止めテープあるー? 筋肉痛とれなくてー」
 暗い気持ちが広がっていたわたしの耳に、カラッと明るい声が響いた。
 男子の声……?
「先生ー?」
 足音が私のほうに近づいてきた。
 さっき、先生職員室に用があるからって出て行っちゃったんだよね。
 教えてあげたほうがいいかな?
「……先生は今いませんよ」
 そう答えると、サッとカーテンが開けられた。
「あ、寝てたんだ? ゴメンな、騒がしくして」
 と、わたしにほほえみかけてきたのは、目鼻立ちの整った背の高い男子。
 体育の途中なのか、ジャージ姿で、髪も汗ばんでるけど、そんなことが気にならなくなるほどさわやかな笑顔。
 こんなひと、うちの学年にいたっけ?
 先輩かな……?
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