嘘つき運命ごっこ
ため息をつきながら、後ろ手に扉を閉める。


「元気なさそうだけど、どうかしたか?」


同じタイミングで部屋を出たらしく、学さんが後ろから私の手を取った。


「あ、学さ……──」


とっさに振り向いて、だけど自分がひどい顔だったことを思い出し、すぐに目を伏せた。


「え、えっと、なんでもないんです……」


下を向いたくらいじゃ、隠しきれていないだろうけど。


「……顔色悪いぞ。無理すんなよ」


きっと気づいたはずなのに、そこには触れずに、学さんはそっと手を離した。


「学校で気分悪くなったら、連絡して。迎えに行くから」


優しい……。

学さんは、本当に優しくなった。
ううん、元々こんな人だったんだと思う。

背中を見送って、お互いの右手を交互に見る。


今日も、赤い糸は繋がっている。
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