ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 何度もお礼を言って車を降り、酔っているせいだけではない心地よい浮遊感を覚えつつ階段を上がる。二階の自分の部屋の前に着いて下を見ると、まだ停まっていた彼らの車がゆっくり発進した。

 私がここにたどり着くまで見届けてくれていたんだとわかり、感謝しきりで玄関のドアを開けた。

 築三十年越えの、1DKのこぢんまりとした部屋が私の住処だ。ダイニングキッチンに置いたカフェテーブルに座り、さっそくいただいたプレゼントを開けてみる。

「わ、綺麗……!」

 和紙に包まれていた箱を開けて現れたのは、日本酒を使って作られた琥珀糖。小瓶の中にパステルカラーの宝石のような欠片が詰まっている。

 これをくれたのも、御鏡さんにとってはただの社交辞令みたいなものかもしれない。だとしても、私の心の中はこの琥珀糖みたいにきらきらと輝いて、カラフルに色づき始めている。

 二十六回目の誕生日は、人生で初めてと言っていいくらい特別な一日になった。



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