婚約者と親友に裏切られて殺された聖女はアンデッドとして蘇ります!〜冥王様と共に絶望をお届けする予定ですけど……覚悟はいいですか?〜
見つめ合ってからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
ハッとしたヴィヴィアンは男性に問いかける。


「天国ではないというのなら、ここはどこでしょうか?」

「お前達が〝死の森〟と呼ぶ場所だ」

「あ……」


そう聞いたヴィヴィアンは先程までの記憶を思い出す。
心の中は絶望感でいっぱいだった。無意識にハラハラと頬に涙が伝う。
次第に感情が堪えきれなくなり、ヴィヴィアンは肩を揺らして泣いていた。

死の森は元々、ベゼル帝国のものだったそうだ。
グログラーム王国の五倍ほどの広大な土地を有したベゼル帝国には今は死の森がある。

その原因が冥王……つまり死の森やアンデッドを作り出した化け物ではないかといわれている。
冥王がベゼル皇帝を倒して、冥王として君臨して帝国を真っ暗な森で覆い尽くしたのだと皆は語っていたが、それは本当かどうかはわからない。

今まで元ベルゼ帝国、つまり死の森を焼き払い広大な土地を手に入れようと何国も何千もの人が動いてきたが、成功したものは一人もいない。
グログラーム王国もそのひとつ。
元々、ベゼル帝国は魔法の力を持ち、ベゼル皇帝は各国から恐れられていたそうだ。
しかしアンデッドを生み出す冥王には敵わなかった。

そんな恐ろしい死の森に捨てられたヴィヴィアンはこれからどうしていけばいいというのか。
目の前の男性が困惑しているとも知らずに、冷たい手のひらで顔を覆う。
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