墜愛


「…麗蘭?」


返事をしない私を不思議に思ったのか、

歩美がもう一度、声をかけてくる。


ハッと気付いた時には、

線香花火の火も、落ちてしまっていた。


「あ、ごめんごめん!うん、告白ね!なんで私が嫌がるのよ。歩美なら大丈夫。成功するよ、絶対。」


「そう…かな?」


「うん!綾人も、前に『歩美っていいやつだよな』って言ってたし。」


「そうなの!?嬉しい。じゃあ今度頑張って告白してみる!」


「うんうん。頑張って!」


嬉しそうに笑う歩美に、

私も笑顔で応援の言葉を送る。



いいな、歩美は。



とても素直で、ホントにいい子。

その上、女の子らしくて可愛い。



もしかしたら、

綾人が歩美と付き合い始めたら、

もう歩美しか見えなくなって、

近い将来、

結婚してしまうかもしれない。



急に不安になる。



友達の恋はもちろん、応援したい。


でも、私のこの片想いは、

もう叶うことがないのかもしれない。


複雑な気持ち。

必死に平静を装っていると。


< 15 / 58 >

この作品をシェア

pagetop