時と姿を変えた恋

 彼が告白するまで、相当我慢していたのを知っていた。彼の気持ちは最後の二回の食事の時に目の色を見てわかっていたんだ。

 それなのに、先輩は結婚しているから絶対手を出したり、告っては来ないという変な確信を信じて、特別な後輩という席に甘えていた。

 その日。

 娘の演奏と拓也君の演奏以外耳には入ってこなかった。そしてどこか様子の変な私に、夫は発表会で私自身も緊張しているからだろうと思っていたようだった。

 帰り際、彼は声をかけてくるかと思ったらかけてこない。

 私はひとり舞い上がっていたことに気づいて、自分を呪った。そして、忘れようと思ってその日が終わったのだ。

< 13 / 42 >

この作品をシェア

pagetop