アンハッピー・ウエディング〜後編〜
秋立つ頃の章5〜前編〜
さぁ、いよいよ始まった文化祭。

昨日までに、雛堂達と協力しながら、準備万端整えてきたからな。

特にこの数日と来たら、あまりの忙しさに、雛堂がまたしても白目を剝いていたくらいだから。

今日は、その成果を遺憾なく発揮したい。

…ところだったが。

問題は、苦労して開店した『HoShi壱番屋』に、ちゃんとお客さんが来てくれるのか、という点だ。

こればかりは、俺にはどうしようもない。

教室の真ん前には、立派な看板を立ててある。

クラスメイトと協力して、ペンキを塗って作った力作である。

とは言っても、某カレーショップのロゴマークをモチーフにした、パクリ看板だけど。

クラスメイトに頼んで、手書きのメニュー表をたくさんコピーして、ビラにして新校舎で配ってもらうことにはなっているが。

果たして、あの白黒印刷の安っぽいビラに、どれほど効果があるものだろうか…。

カレーの準備も、糠漬けの準備も既に出来ている。

教室の中も、テーブルと椅子を並べ、テーブルクロスを敷いて、ばっちりセッティングしてある。

こちらの準備は完璧。

あとは、カレーを食べにやって来るお客さんを待つだけである。

…しかし。

「…人、来ねぇな…」

「あぁ…来ねぇなぁ…」

「見事に閑古鳥ですね」

恐れていたことが起きてしまった。

開店したのに、お客さんが一人も来ない。

これには、シェフ(俺)も涙目である。
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