アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「…まぁ、何にせよ」

と言って、雛堂は机から顔を上げた。

「自分は行けないし、真珠兄さんも邪神の務め(笑)だか何だかで、クリスマスパーティーは出来ないみたいだし」

「そのようだな」

「勝手に(笑)をつけないでください」

うるせぇ。

「折角だから、クリスマスは無月院の姉さんとデートでもしてきたら?」

「でっ…!」

何だよ、その言い方。

クリスマスパーティーなら良いけど。それじゃあまるで、恋人同士みたいじゃないか。

…ない。ないない。有り得ない。

寿々花さんだって嫌がるよ。…多分。

「ほら、夜景の見えるレストランでクリスマスディナーとかさぁ」

「ド定番過ぎて、逆に非リア充って感じですね。大也さん」

「うるせぇ!非リアこそ定番に憧れる生き物なんだよ!」

俺は憧れないけどな。…マジで定番過ぎて。

大体、夜景の見えるレストランでクリスマスディナー…なんて、高校生の身分で贅沢過ぎるだろ。

それに、そういうお店はもう、何ヶ月も前に予約いっぱいで満席だと思うぞ。

雛堂みたいな、ド定番に憧れるカップル共でな。

「デートしてこいよ、デート。ディナーの後街を歩いてたら雪が降ってきて、ロマンチックなホワイトクリスマス…みたいな」

「夢の見過ぎですね」

「童貞の妄想って感じだな」

いつまで経っても雛堂が非リア充なのは、こういうところが原因なんじゃなかろうか。

俺も人のこと偉そうに言える立場じゃないけどな。

「うるせぇ!聖夜に女の子とデートどころか、サルみたいにキーキー喚くチビ共の相手をしなきゃいけない自分の気持ちが分かるか!?」

分からねぇよ。

分からねぇけど、だからってそんなベタな妄想に逃げるのは良くないと思うぞ。

「世間のカップルは…もっと色んな過ごし方をしてると思うぞ」

「お?何だ、自分らもそうしますってか?このリア充め。爆発するか?お?」

「しねーよ。他人事だと思って適当言いやがって」

普通に過ごすわ。クリスマスだからって、別に特別なことは何も…。

何も…うん。

「そして、ディナーの後は愛のこもったクリスマスプレゼント、だよな!悠理兄さん、くれぐれもプレゼントはよく考えろよ」

「余計なお世話だっての」

雛堂に余計な口出しされなくても、うちはうちなりのやり方で、クリスマスを満喫するつもりだよ。
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