アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「わーい。ありがとう悠理君。お部屋に飾ってくるねー」

「はいはい。良かったな」

嬉しそうにクリスマスプレゼントを抱いて、寿々花さんは俺の部屋から駆けていった。

はしゃぎ過ぎて転ぶなよ。

渡し方は相当無様だったけど、でもあれほど喜んでもらえたなら、結果オーライって奴だ。

スイーツビュッフェと共に、寿々花さんにとって、忘れられないクリスマスの思い出になってくれたら嬉し、

「大変だ、悠理君。忘れ物!」

「うわっ、びっくりした」

部屋から出ていったと思っていた寿々花さんが、慌てふためいて戻ってきた。

また不意をつかれた。

「ど、どうした?何を忘れたんだ?」

「私、悠理君に用事があって来たのに。その用事を済ませるの忘れてた」

…用事?

そういえば、(無断で)俺の部屋に入ってきてたんだっけ…。

そこで、その…俺が変な、その…夜這いのことを口走っていたから、つい話が流れてしまっていたが…。

「用事って何だよ?」

「私も悠理君に、クリスマスプレゼント渡そうと思ってたんだった」

…えっ。

「…」

「…」

俺と寿々花さんは、互いに無言で見つめ合った。

…マジで?

じゃあ、何?俺達。

二人して、同じタイミングで、同じこと考えてたってこと?

「…似た者同士かよ」

「類は友を呼ぶ…って奴かな?」

「…冗談だろ…」

俺とあんたを一括りにしないでくれよ。

さすがに俺は、オルゴールの存在くらいは知ってるっての。

「はい、これ悠理君に。メリークリスマス」

「お、おぉ…。どうも、ご丁寧に…」

プレゼントは二つ。

一つは、小さな赤い封筒に入ったクリスマスカード。

開いてみると、可愛らしい、雪だるまのクリスマスカードだった。

そこに、寿々花さん直筆の英語でメッセージが書いてあった。

…けど、達筆な筆記体で書いてある上に、俺の貧弱な英語力のせいで、何て書いてあるのかいまいち読めない。

ごめんな、寿々花さん。折角書いてくれたのに。俺、馬鹿で。

後で、電子辞書の力を借りながら解読するよ。

それから、もう一つのプレゼント。

小さなラッピングバッグの中には、うちの学校の校章によく似た、青い薔薇のチャームがついたキーホルダーが入っていた。

「どうかな?…気に入った?」

「あ…。…あぁ、うん…」

…寿々花さんにしては、物凄くまともなプレゼントでびっくりした。

これまで何度か、寿々花さんに贈り物をもらう機会はあった。

誕生日プレゼントや、遠足や修学旅行のお土産で。

でも、それらはいずれも一癖も二癖もあるプレゼントばかりだったから。

今回もその類だと思って、自分なりに身構えていたのだが。

全然そんなことない、普通にお洒落な贈り物で、逆にびっくりした。

そう来たか、って感じ。

回し蹴りが来ると思って身構えてたら、どストレートにグーパン食らったような気分。

多分俺、びっくりして、相当間抜けな顔をしていたんだと思う。

何やら誤解した寿々花さんが、表情を曇らせた。

「…あんまり、気に入ってもらえなかった?」

「えっ?いや、違う。そんなことない」

そうじゃなくて、寿々花さんらしからぬプレゼントにびっくりしただけだよ。
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