アンハッピー・ウエディング〜後編〜
つーか、こんな言い方したら悪いけどさ。

…この施設、需要ってあんの?

「キノコの博物館?行こう!」って思う人が、全国にどれくらいいるのか。

余程キノコが大好きな人か、キノコ学者くらいしか興味ねぇんじゃないの。

まぁ、同じくらい需要のなさそうな深海魚水族館にも、一定の需要があるみたいだし。

この「見聞広がるワールド」関連の施設、爬虫類や深海魚に続き、キノコ博物館まで開館するくらいだから。

多分、それなりに儲かってるんだろう。とても儲かってるとは思えないが。

変な施設ばっか。

でも、この変な施設だからこそ、需要があるんだろう。

普通の動物園や水族館じゃ、何処にでもあるって言うか…見飽きてるって言うか…定番過ぎてつまらないって言うか。

一風変わった、目新しい施設の方が興味を惹かれる…ってことなんだろう。

…ともあれ。

「今の俺達にとっては、願ったり叶ったりだな…」

「でも、その施設って何処にあるの?」

「あ、そうだ。場所…」

飛行機の距離だったら、さすがに無理だぞ。

新幹線の距離くらいだったら、この際、プチ旅行感覚で行くけど。

出来れば近場で…と思いながら、ホームページのアクセスをタップ。

えぇと、この住所なら…。

「遠い?…飛行機?飛行機で行く?」

「いや…。…結構近いぞ」

「おー。凄い偶然だねー」

偶然で済ませて良い問題か?これが。

さすがに、爬虫類の館や深海魚水族館ほど近くではないが。

これくらいの距離なら、飛行機どころか、新幹線も必要ない。

電車で充分行ける距離。

こんなに都合の良いことってある?

なんつーか、今年一年分の運を使い果たしてる気がする。

俺達、二人しておみくじ「凶」と「大凶」だったのに。

今年始まったばかりで、早速この強運。

な?おみくじなんて当てにならないだろ?

こういうことがあるからさぁ。

じゃあ、まぁ、なんだ。

こうなったらもう、運命がお膳立てしてくれてるようなもんだ。

「…行くか。今週末、早速」

「やったー。行こー」

いざ、開館したばかりの『見聞広がるワールド キノコ博物館』へ。

星見悠理の行動活動記録より、余程生物のレポートらしいじゃないか。
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