アンハッピー・ウエディング〜後編〜
帰宅してから、寿々花さんを問い詰めた。

「つかぬことを聞くけど、あのカカオ豆って、いくらしたの?」

「ふぇ?●万円くらいかなー」

あまりにもさらっと答えられて、俺はその場に卒倒するところだった。

やっぱり経済観念がおかしい。

「そ、そんな高い買い物を…さらっと…もうちょっと躊躇えよ」

「悠理君と一緒に、楽しくチョコ作り出来たんだよ?そう思ったら安い買い物だよ」

何処がだよ。たけーわ。

貧乏性の俺にとっては、清水の舞台から飛び降りるも同然の、お高い買い物である。

「…あのな、寿々花さん一緒に何かやって楽しみたいだけなら、いくらでも何でも付き合ってやるから」

「ふぇ?」

ふぇ、じゃなくてさ。

「そんな高い買い物しなくて良いんだよ」

この際、おままごとでもお絵描きでも付き合ってやるよ。

何なら、一緒にホラー映画鑑賞会でも構わないぞ。

カカオ豆(ウン万円)からチョコレートを作る作業に比べたら、楽なもんだ。

「…本当に?付き合ってくれる?何処でも?」

「あぁ。良いよ」

南極!とかアメリカ!とか言い出さなかったら何処でも良い。

そして寿々花さんの「我儘」は、いつでも我儘の範疇に入らないのである。

「作るのは大変だったけど、めちゃくちゃ大変だったけど、でも結果的に高級チョコを食べさせてもらったからな。そのお礼も兼ねて…」

「じゃあね、えーっと…。実は前から行ってみたいところがあったんだ」

ほう?何処だよ。

無月院家のお嬢様の「行ってみたいところ」。

さぞや珍しい秘境の地、

「何処だ?行ってみたいところって」

「えっとね、げーむせんたー、ってところ」

…な?言っただろ?

我儘の範疇に入らないって。





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