天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 その状況からアマリリスを救い出そうとルシアンは父に相談したが、その時は立太子もしていなくて意見を述べてもまともに取り合ってもらえない。ましてやバックマン公爵家とクレバリー侯爵家の縁談に王族が口を挟むべきではないという父の意向もあり、ルシアンにはどうすることもできなかった。

 仕方なく調査のためにクレバリー侯爵家へ忍ばせていた王家の影へ命令して、アマリリスが飢えないように、好きなだけ勉強できるように、誕生日には金貨を用意して、ルシアンの名前は伏せつつ影を通して家令を動かしていた。

 そうしてやっとのことで、アマリリスをルシアンの教育係にできたのだ。

 ところが、兄であるテオドールの消息を掴み、アマリリスは早々に教育を終えてルシアンのもとから去ると言った。ルシアンはほんの一瞬もアマリリスを手放すつもりはないから、父を巻き込んで先手を打った。

「さて、書類はこれで終わりかな?」
「ああ、そうだな。次は……」
「カッシュ、次は僕の仕事を手伝ってほしい」
「ルシアンの仕事? 他になにかあったか?」

 首をひねるカッシュに、残忍な悪魔の如き笑みを浮かべてルシアンは言葉を続ける。

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