天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 真冬の気候もあいまってエイドリックの体調がなかなか回復せず、一カ月ほどの休養が必要だと医師に診断された。エミリオの件といい、アマリリスが出ていってから心労が絶えなかったのも影響していたらしい。

 その間も妻のフランシルはお茶会や貴婦人たちとの社交に忙しくしていて、いつも通りに過ごしていた。

 冬本番を迎えたある日の朝のことだ。
 エイドリックは経験したことのない寒さで目が覚めた。

「なんだ、この寒さは……? 暖炉の火が消えているではないか! おい、誰かおらんか!」
「旦那様、おはようございます。いかがなさいましたか?」

 エイドリックの怒号で駆けつけたのは家令のケヴィンだ。何食わぬ顔でエイドリックに尋ねてくる。

「暖炉の火が消えているではないか! 寒くて起きれんのだ、今すぐ火をつけろ!」
「申し訳ございません。あいにく薪の在庫が足りないため、各部屋で就寝の間は消すことになったのです」
「なぜそんなことになっている!? 冬季の薪くらい用意できる予算はあっただろう!?」
「それは……詳しくはロベリア様とダーレン様へお尋ねくださいませ」
「ふたりはどこにいる!?」
「旦那様の執務室でございます」

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