【短】「花火を背にした少女」


「それじゃあ絵翔(かいと)の家行かせてよ。私が絵を描くとこ好きなの知ってるでしょ」


「無理。1人で描きたいから。…それよりさ、これ」




 私がいるから集中できない、なんてことはないはずなんだけど。

 これが思春期かな、なんてお母さんの口癖を真似しながら、絵翔(かいと)が取り出したスマホを(のぞ)きこむ。


 長方形の画面に映っているのは暗い写真。

 画面の下から中央にかけて、ぼんやりと光が写っているようだけど…なんだろう、これ?




「昨日、床に月の光が差してたから撮ったんだ。写真じゃ上手く撮れなかったけど、歌月理(うつり)、こういうの好きだろ」


「え~、そうなんだ!絵翔(かいと)が写真撮るなんて珍しい!幻想的だよね~、光を撮るなら、絞りを絞って露出も短めで…」
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